91猎奇

【研究成果】遺伝病の重症さを決める遺伝因子の存在を解明 ―12年にわたる観察による成果―

本研究成果のポイント

◆网膜の遗伝性难病において、病気の重症度を変化させる遗伝的な因子の存在を証明。
◆遗伝病は、同じ遗伝子异常を持っている患者でも重症度が人により违うことが知られており、环境や遗伝的な背景の违いによるものと考えられていたが、実际に遗伝的な因子の存在を証明することは特殊な疾患以外困难だった。
◆今回、遗伝病が発症する遗伝子の変异を持っていても、他の要素によりその症状を軽减できる可能性が判明し、多くの遗伝子がかかわる网膜色素変性症のような疾患の治疗への応用が期待される。

概要

 大阪大学大学院医学系研究科の崔総(Cong Cui)さん(博士後期課程)、辻川元一教授(国立研究開発法人医薬基盤?健康?栄養研究所 医薬基盤研究所 招聘プロジェクトリーダー(兼任))らの研究グループは、広島大学 大学院统合生命科学研究科 大森義裕教授と共同で、遺伝性難病である網膜色素変性症※1の原因について遗伝子変异(病因遗伝子)の他に、症状の重症度を调整する二つの因子の存在を明らかにしました。
 

図:病気の原因遗伝子とは别に症状を変える遗伝因子がある

 一つは病因遗伝子のそば(cis)にあり、病気の遗伝子の発现の量を减らすことで症状を改善していました。もう一つは病因遗伝子と违った位置(trans)にあり、これにより軽症化していた病态が重症になることが分かりました。このように一つの遗伝病の病因遗伝子変异に対してcistransの异なる遗伝因子の存在があることを初めてモデル动物において証明しました。
 これまで、このような遗伝病の重症度を左右するような遗伝因子(修饰因子)の存在は、概念としては理解されていたものの、特殊な例を除いて証明されていませんでした。
 今回、研究グループは、ヒト网膜色素変性症のモデル鱼を用いることにより、cistransの二つの修饰因子が存在することを解明しました。これにより、このような修饰因子を使う事で遗伝病を含めた疾患の重症度を予想し、コントロールすることの基础を筑き上げました。
 本研究成果により、遗伝病においての症状?重症度?予后を左右するような遗伝因子の発见や治疗への応用が期待されます。
 本研究成果は、独国科学誌「Advanced Science」に、4月10日(金)に公開されています。

辻川教授のコメント

 本研究は一つの遗伝子异常を持ったモデルの鱼を12年にわたって详细に観察することによって、今まで知られていなかった遗伝修饰因子の存在を示したものです。継続することときちっと観察することの重要性を改めて认识させてくれた研究になります。

研究の背景

 遗伝病は、一つの遗伝子の异常で病気が発症してしまう疾患です。そのため、同じ家系(例えば兄弟)の患者は、同じ遗伝子异常を持っていることになります。ところが、多くの疾患では、この患者の间でも重症度が大きく违うことが知られていました。网膜色素変性症はそのような眼科の代表的な遗伝病です。
 これまで、重症度の违いは环境や遗伝の差によって生じると考えられてきました。例えば光の暴露などの环境要因については、実験动物を用いた研究が进められてきましたが、遗伝の影响については概念的な议论にとどまり、その存在を証明することは困难でした。

研究の内容

 研究グループでは、12年にわたってヒトの网膜色素変性症のゼブラフィッシュを用いたモデル动物の家系を検讨しました。その结果、遗伝子の変异が同じであるにもかかわらず、症状がきわめて軽い家系の発生を発见しました。これは、原因となる遗伝子変异の近く(cis)にある3塩基の违いによって、軽症の家系が発生していたためです。
 さらに、この軽症化した家系を野生型の正常の鱼と何度かかけ合わせたところ、子供の半数が再び重症化する家系があることを発见しました。この重症化した鱼の子孙はそれ以降も半分は重症化し、半分は軽症のままでした。これは、この病因遗伝子から离れた位置(trans)にある遗伝因子の存在を强く示すものです。このような一つの遗伝子変异による遗伝病の発症において、重症度を変化させるcisおよびtransの因子が同时に同定されたことは世界で初めての成果です。

本研究成果が社会に与える影响(本研究成果の意义)

 本研究成果により、网膜色素変性症以外の遗伝病においても症状?重症度?予后を左右するような遗伝因子の発见が期待されます。これにより、このような重症度の予想ができるようになる可能性があるだけでなく、予后をコントロールできる可能性が考えられます。特に、原因遗伝子が数多くある网膜色素変性症においては、変异にかかわらず、軽症化するようなtransの因子が存在する可能性があり、治疗への応用が期待されます。

特记事项

 本研究成果は、2026年4月10日(金)に独国科学誌「Advanced Science」(オンライン)に掲載されています。
タイトル:“Cis‐ and Trans‐Regulatory Factors Independently Shape Phenotypic Heterogeneity of Retinitis Pigmentosa”
著者名:Cong Cui, Kotone Nakagawa, Takumi Tateno, Ayaka Dan, Dexin Meng, Yoshihiro Omori, Soma Tomihara, Suzuri Okamoto, Shigeru Sato, Motokazu Tsujikawa
 なお、本研究は、AMED革新的先端研究開発支援事業(課題番号 JP24gm1510010h)、日本学術振興会科学研究費助成事業(課題番号 JP25K02794, JP24K22167, JP23K21480)の一環として行われ、広島大学 大学院统合生命科学研究科 大森義裕教授の協力を得て行われました。

用语説明

※1 网膜色素変性症
 网膜色素変性症は、眼の内侧にあり、カメラでいうフィルムの役割を果たす网膜という组织に异常をきたす、遗伝性、进行性の病気です。国の指定难病であり4000人~8000人に一人が発症するといわれており、比较的频度の高い疾患です。原因遗伝子が300以上存在しており、患者により重症、軽症の差が大きいことも特徴です。
 

【お问い合わせ先】

<研究に関するお问い合わせ>
大阪大学 大学院医学系研究科保健学専攻 教授 辻川 元一(つじかわ もとかず)
TEL:06-6879-3456  
E-mail: moto*ophthal.med.osaka-u.ac.jp

<広報に関するお问い合わせ>
大阪大学 大学院医学系研究科保健学事務室庶務係
TEL:06-6879-2504    FAX: 06-6879-2629
E-mail: i-hoken-syomu*office.osaka-u.ac.jp

 国立研究開発法人 医薬基盤?健康?栄養研究所 戦略研究支援部企画課 広報担当
 TEL:072-641-9832    FAX:072-641-9821
 E-mail: pr*nibn.go.jp

広岛大学広报室&苍产蝉辫;
&苍产蝉辫;罢贰尝:082-424-4383
 E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp

発信先 报道机関 
大阪大学から 大阪科学?大学记者クラブ、文部科学记者会、科学记者会
国立研究开発法人医薬基盘?健康?栄养研究所から 厚生労働省记者会、大阪府薬业记者会
広岛大学から 広岛大学関係报道机関

(*は半角@に置き换えてください)


up